絶対知られたくないの感想

オススメポイント
その1 ・二人の思いが食い違う瞬間
その2 ・一人舞台ならぬ「二人漫画」であるということ

この記事はこんな御仁にオススメ

・真面目同士のイチャラブが読みたい
・女上司ものが好き

・「DLsite がるまに」で女性向けエロ同人誌や音声作品を買ってみよう

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前書き

さて、今回は【Rosa_ceae】の「絶対知られたくない」です。
この作品は「DLsiteがるまに」で開催されていた「5作品選ぶと合計金額が1650円になる、まとめ買いキャンペーン」の時に出会った作品になります。
元々欲しかった作品を選んだ後に「残りはどの作品を選ぼうか」という感じで、何作かピックアップした結果この作品を選びました。
人気作や話題作を「ある程度、評価が分かった上で」購入するのは安心できて良いですが、今回のように「たまたま出会った作品が非常に好みだった」というのはとても嬉しいものです。

そして今回の「フック(興味を持ったきっかけ)」は「ヒロインである「隊長」が、部下である「隊長補佐」に屈託のない表情で「君とセックスしてみたい!」と言うことで物語が始まる」という点でした。
この「素直クール」というジャンルは男性向けではかなり人気があり、まさに今作と同じく「君とセックスしたい」とヒロインが言ってくるという作品はたくさん見てきました。しかし私は、女性向け作品で「ヒロインが素直クール」のものを見たことがありませんでした。なので、一体どういう話の展開になるのか、男性向けのそれと同じものなのか、など気になる点がたくさんあったんですね。
結果的に私はこの作品をとても気に入り、二週間後に続編の「絶対知られたくない2」を購入することになります。続編も近い内に記事にできればと思っております。
いやぁ、どちらも良かった…!

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レビュー

内容としては「女上司である隊長に、秘めたる想いを抱く隊長補佐。隊長の信頼に値する人間にならねば、と任務中は毅然と振る舞う隊長補佐だが、頭の中では何度も隊長を抱いてしまっている。そんなある日、隊長から笑顔で「君とセックスしてみたい!」と提案された隊長補佐は、断ることが出来ずに夜を共にしてしまい…?!」というもの。

私はこの作品を読んだ時、真っ先にシャ乱Qというバンドの「友達はいますか」という歌を思い浮かべました。私が子供の頃、母が車の中でよく聞いていたその歌。私は思春期を迎える前にこの歌に出会い、ある一節をずっと忘れずに生きてきました。それが二番のこの部分。

ほろにがい 青春の 永遠のテーマですか
男の子 女の子 その間の友情は
みんなは存在するなんて言ってるけど
この僕がフシダラなこと考えると変ですか?

まさにこの作品の「隊長」と「隊長補佐」の関係。ちなみにこの二人は最後まで「隊長」や「君」としか呼ばれず、読者には二人の名前が分かりません。
隊長補佐は自分が「隊長を脳内で犯している」という事実に罪悪感を覚え、「絶対に知られてはいけない」と考えます。どう考えても補佐は「隊長は自分に対し、特別な感情は抱いていない。この関係を壊さないように自分の気持ちはひた隠しにする」と思っているはず。
なのに隊長からいきなり「君とセックスしてみたい!」と言われ、それまでのモヤモヤがぶち壊しになるのです。その勢いに私は「この作品はそういうテンションのギャグテイストで話が進むのか?」と思ってしまいました。

しかし、実際に本編を読むとそうでは無かったんですね。二人の思いが交差し、少しだけ食い違い、最後にしっかりはまり合う。表情の描写が特に素晴らしく、この「パワー系の導入」に負けない丁寧さが光る良作でした。

※ここからネタバレあり(この注意書きについての説明)

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オススメポイント

その1 ・二人の思いが食い違う瞬間

この作品のどこが一番良かったのか、それは「最終目的は同じはずなのに「思いを口にする」「口にしない」というお互いの性格の差のせいで、気持ちが食い違う瞬間がある」というところです。
というのもこの作品、隊長も補佐もどっちも真面目な人間で、相手を尊重するシーンしか出てきません。私はなかなか「カップリングのどちらもが同じ属性」という作品は見たことがなく、少々驚きました。

さて、本編の内容に関して。隊長からSEXに誘われた補佐は「隊長が自分に特別な思いを抱く訳がない」と思っているため、SEXに関しても「きっと自分を相手に、練習でもするのだろうな」と受け取ります。本当は断るべきだと思いながらも(正式に付き合ったり、好き合ったりする仲ではないため)隊長への想いを捨てきれずに「了承」してしまうのです。

対する隊長。これは後々分かることなのですが、要は「すでに隊長は補佐のことが好き。そして補佐も自分のことを好いていると思っていた(信じていた)ため、「告白という段階」はすっ飛ばしていきなりSEXに誘う」ということなのです。真面目人間同士、相手を尊重するのはもちろん当然のこと。さらに相手からの「優しさ」や「敬意」も、妬みや僻みなど無く「ちゃんと丸ごと」受け取ることが出来るのです。

そしてそれは補佐も隊長も同じなのです。補佐が隊長に対して「自分を友人として好いてくれている」「役職に関係なく、プライベートではフランクに接してくれて嬉しい」と感じているように、隊長もまた同じことを感じている。
しかし補佐は「人に話せないフシダラな妄想」をひた隠しにして自分を律します。「隊長の信頼に足る人間になりたい」と思い、真面目な態度で隊長に接するのです。しかしその行為は、果たしていけないことなのでしょうか?「フシダラな妄想」をする時点で人として最低なのか。「フシダラな妄想」を隠して意中の女性に接することは悪いことなのか。
隊長にとっては「補佐がフシダラな妄想をしているかどうか」は知り得ないことであり、結果として(自制し、より真摯であろうと意識する補佐の言動)の「自分に対し、真摯に接してきてくれる補佐」は「素敵な人間」として映ることでしょう。
どころか、もしかすると「隊長と補佐は同類」として描かれているため「隊長もまた、脳内で補佐を犯す妄想をしている可能性」すらあるのではないでしょうか。それは「ひた隠しにしさえすれば」自分以外の人間は絶対に知り得ないことなのです。

そんな中、18ページで出てくる隊長からの「とても…気持ちが良いな、両思いの相手と肌を合わせるのは」という驚きの台詞
「相手から恋愛的な意味で好かれていないと思っているし、自分の思いも表に出さない補佐」と「相手から恋愛的な意味で好かれていると思っているし、自分の思いも表に出す隊長」の決定的な食い違いが判明するシーンです。
なぜ自分の思いがバレているんだ?!と焦る補佐。しかしこれだって、隊長からしてみたら「(私も君もお互い両思いなのだから)君とSEXしてみたい!」と誘ったらOKが出たからこそ、抱き合っている訳で。むしろここで補佐に「両思いではない」と言われたら「じゃあなぜSEXの誘いをOKしたんだ?」ということになるのです。

補佐の「なぜ隊長は、好きでもない俺に対してSEXの誘いを?」という疑問は、それ自体が隊長に対して失礼なものだったんですね。「君は、好きでもない男をSEXに誘うような人間を好きになったのか?いや、そうではない。隊長は君の思う人物像そのもの、違うのは君の自己評価の低さだけ」という、シンプルな答えだったんです。

全44ページ中、中盤少し前に出てくるこの「食い違い」のシーン。ここから隊長と補佐のお互いの想いが明確になり、一気に展開がスピードアップ。補佐に攻められる時の隊長の表情、隊長の想いに触れた補佐の切なげな表情、そして今作で私が一番好きな37ページの隊長の表情。
お互いの気持ちを吐き出し、受け入れ合ったからこそ「それまでは見られなかった細かな表情の変化」という次のステージに進める。新しい自分を、もっと相手に知ってもらえるのです。

その2 ・一人舞台ならぬ「二人漫画」であるということ

この作品はなんと、最初から最後まで「隊長」と「隊長補佐」しか出てきません(おまけ漫画に1コマだけ使用人が出てきますが、ここでは本編についてのみ話させてください)。しかも隊長補佐側の視点でしか話が進まないため、作中には「隊長の台詞」「補佐の台詞」「補佐のモノローグ(心の中の声)」しか出てきません。

しかも隊長は初手が「SEXしたい」のため、読者は「隊長は心で考えたことをそのまま口にするタイプなんだ」と思ったまま読み進めます。「読者は神の視点で作品を楽しめる」と思いきや、我々は「隊長のモノローグ」を知ることは出来ない。つまり、実際には「補佐と同じ情報しか知ることが出来ない」んですね。もし仮に「補佐のモノローグも出てこない」のであればフラットな視点で物語を俯瞰できそうなものですが、今作は「登場人物が二人しかいない」ので、第三者視点になることは出来ないのです。

上手く伝わっていない可能性があるので少し補足を。もしこの二人の会話が「他の隊員がいる食堂や詰め所などで行われている」のであれば、読者=そこにいる他の隊員とすることで「隊長と補佐の会話のみを聞いている」という楽しみ方が出来ます。今作も例えば「読者=二人きりの部屋の壁やベッド」とすることで擬似的な第三者視点を作り出し、会話のみのやり取りを作り出すことは可能ですが、それは少々ドライすぎる。
今作では明確に「登場人物は二人のみ」「会話の他に、補佐のモノローグだけを知ることが出来る」という設定で話が進むため、「読者が得られる情報はちょうど補佐と同じ」つまり、否応なく補佐に感情移入して作品を読んでしまうということになるのです。

そうすることで前述の「両思いの相手と」と言われた時の補佐の驚きが、まるで自分のもののように感じられると思うのです。そこまで味わうことが出来ればあとは簡単。その後の隊長とのイチャラブエッチの幸福感も気持ちよさも、先ほどと同じく「自分のもののように」感じられるため、読後感が非常に気持ちいいものになるんですね。
先程紹介した「37ページの、隊長の最高の表情」も補佐の目線から描かれます。更には画面いっぱいに大きく隊長の顔が描かれるため、読者の目線=補佐の目線となり「こんな表情を見ることが出来るのは世界で俺(補佐=読者)だけだ」という気持ちを味わうことが出来るんですね。

と、ここまで補佐の隊長のイチャラブに相乗りさせてもらっていた読者。なんと最後の最後で「補佐が隊長に想いを伝えるシーン」では、隊長は「隠してしまおう」という言葉とともに自分たちをシーツでくるんでしまいます。
読者が一番聞きたかった告白シーンは、完全に二人だけのものとなり、物語は終わってしまう。相乗りもゴール直前で終了となってしまうんですね。
しかし、よくよく考えると今作のタイトルは「絶対知られたくない」なのです。本当ならばこれが正しいんですね。最後にスッ…と物語の幕が下ろされる心地よさ、実際に本編を読んで味わっていただけたらと思います。

最後に

物語の導入、登場人物の少なさなど「狭い道」をあえて選び、進んでいく今作。キャラ設定やテンポからは想像しにくい「好意を持った女性への性的な妄想」というテーマ。そういった要素がバランス良く混ざり合っていて、読む前の印象からは考えられないほどの「まとまりの良さ」を感じました。
Rosa_ceaeさんは今作と続編の二作しか、まだ作品を出されていません。女性向けには本当に多いんですよね、こういった「一作目、二作目なのにこんなにクオリティ高いの?!」というサークルさんが。少しでも多くの御仁にこの作品の魅力が伝わればと思います。

商品情報とリンク

絶対知られたくない【Rosa_ceae】

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※がるまに専売