性擬態幼馴染の感想

オススメポイント
その1 ・女の子の男体化から始まるんだ、このTS漫画は!
その2 ・段階を経ていくんだよね

この記事はこんな御仁にオススメ

・TSに対しての思いがあり、あるからこそハマれない人
・すぐに身体の関係にならない作品が好き

サンプル画像1

前書き

さて、今回は【東横大賞典】の「性擬態幼馴染」です。いわゆる「TS(性転換)もの」シリーズの1作目となります。
この作品はいくつか前提情報を書いておいたほうが良いと思うので、先に記載しておきます。

まずは作者さんが、商業誌でも活躍されている「山田金鉄さん」であるということ。と言いつつも、私は恥ずかしながらそちらは読んでおらず、先にこの作品に出会ってしまいました。
サークル名で検索すると、表名義のTwitterでもこの作品の宣伝をしておられたので、せっかくなので先にご紹介を。
作者さんは普段、サブ垢の方でエロ同人のお話やTSについてのお話をよくされています。私はそれを読んで「なんて信頼の置ける方なんだ」とひどく感銘を受けました。ニッチなリビドーの発散、とても

そして、現在(2023/8/20)5作目まで続いているこのシリーズを読む上で一番大事であろうことを説明させていただきます。それは「この作品は男女のどちらもTS(性転換)するため、女x女や男x男のシチュエーションになる」ということ。「TSしても、条件が揃えば元の性別に戻れる」という設定のため、いろいろなパターンが成立するのです。
最新作である「性擬態幼馴染5」は男x男の作品になっており、DLsiteでは5のみが「BL」として売られています。検索する際はもちろん、是非とも購入の際の参考にしていただければと思います。

私は元々BLも百合も大好きな人間なので抵抗なく読めるのですが、中にはBLが苦手な御仁もいらっしゃることでしょう。せっかくなのでこの記事では「私なりのTSに対する思い」などを交えながら、このシリーズの素晴らしさを伝えていきたいと思います。
「内容によっては…」と思う御仁は、先に「オススメポイント」を読んでもらえればと思います。

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サンプル画像2

レビュー

内容としては「高校生で幼馴染の若葉とタケル。若葉は科学が大好きな女の子、タケルは水泳部で褐色の男の子、ある日、若葉は『食べると性転換するグミ』を開発し、それを食べて男の子になってしまう。嬉しそうに研究結果をタケルに説明する若葉だったが、ひょんなことからタケルも性転換してしまい…?!」というもの。

私はこの作品で初めて知ったのですが「ファンタジー的要因でTSするジャンル」とTSFと呼ぶらしく、作品紹介欄などにTSFというワードが出てきます。
私は特に普段「TSものが大好きだ」という人間ではありませんが、このシリーズはとてもツボにハマりました。理由は「心の機微が丁寧に描かれているから」です。作者さんの描きたいエロ要素が描かれながらも、ちゃんと「二人の関係性の変化」や「場面によって変わっていく心情」も表現されている。
そのため「TSやBLが大好きな御仁」で無くとも、「この二人の関係をそっと見守りたい」と思うことが出来ればシリーズを通して作品を楽しむことが出来るのではと私は考えます。

私は、男性向けのTS作品もこれまでにいくつか読んできました。その多くが「同性の親友が女体化し、巨乳化し、最終的に主人公とSEXをし、恋仲になる」というものでした。しかし、こういった作品を否定しているわけではもちろんありません。それはそれでエロいので。
しかし、いろいろと考えすぎてしまう私のような人間は頭の片隅でどうしても「主人公は女体化しないのか?」「女体化TSするとみんな可愛い女の子になるのか?」みたいなことを考えてしまうのです。
もし私がTSしたとしても絶対に美少女にはならないよな、とかそんな余計なことを。これは「ふたなり」にも言えることで、私はいつも「男性のチ〇ポが無くなって、代わりにおま〇こが付くというのもふたなりのはずなのにそちらはあまり見かけないな」とか「女性並の快感を求める男性が多いのならそっちのパターンも読みたいはずでは?」とか考えてしまうのです。

そこで今作。サンプルや表紙に絵がないので説明が難しいのですが、なんと「女の子である若葉」はいわゆる「美少女」として描かれてはいません(作者さん、もし美少女として描いていらしたら申し訳ありません)。
サンプル画像で紹介したコマに出てくる若葉は「男体化した姿」なのですが、このまま顔の輪郭が丸く幼くなった姿が「女の子の若葉」なんです。
胸もAカップなので、元の姿になっても肉感的なボディラインではありません。どころか、女体化したタケルの方が胸が大きいのです。

これだ!と私の中に電撃が走りました。しかもこの設定は続刊の内容にも影響してくるので、個人的には「一つの漫画作品」としての魅力も感じました。更には「TSすると骨格も変化する」という設定のため、両者がTSすると身長差が逆転するのも素晴らしい。TSしたタケルがベルトを締め直すシーンは特に良かったですね。
ちなみに、作者の山田さんは現在「高身長男性が女装をする漫画」を描いておられるようで、そちらも非常に読んでみたくなりました。

男性的な身体・女性的な身体だから魅力がある、可愛いから求める、異性だから求める、違うから深く分かり合える。人間って「それ」だけなんでしょうか。「それ」以外は「惹かれない」んでしょうか。
TSFの延長線にただ「女同士」「男同士」があっただけ、といいますか。たとえ見た目の性別が変化したとしても、中身は「若葉とタケル」であるというのがこの作品最大の特徴なのだと思います。
男性向けの「同性の親友が女体化する作品」の多くは「女性としての喜びを知ることで、心も女の子になっていく」ものが多いのですが、今作は「異性でTSしあう」「条件が揃えば元の性別に戻れる」からこそ心が揺らがなくて済むのも魅力の一つだと感じました。


商品情報とリンク

性擬態幼馴染
【東横大賞典】

通常価格:660円
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オススメポイント(ネタバレあり)

「ネタバレあり」についての説明

その1 ・女の子の男体化から始まるんだ、このTS漫画は!

この作品は「いきなり若葉が『男の子の身体』で登場する」という始まりなのが本当に凄いと思います。しかも高校の校内で。
ジャージで多少隠しているとはいえ「背の高い男子が女子の制服を着ている」のです。状況から察するに、おそらく若葉は「夏休みの理科準備室で、午前中にグミを食べて倒れた」という状況でしょう。そうなると、場合によっては他の学生に「男体化した姿」を見られてもおかしくないわけです。
若葉はタケルの部活が終わるのを下駄箱付近で待っているのですが、この時点では「スカートを履いている今の自分を他の生徒に見られても構わない」と思っているのでしょう。とりあえず下にジャージを履けばそれで十分だ、という気持ちで真っ先にタケルに報告しに行きます。この距離感。
序盤のタケルの反応を見るに、若葉はあまり周りの異性の目を気にするタイプでは無いのでしょうか。「タケルが若葉を意識している」という描写も序盤には特にありません。不思議な関係の二人。

そして中盤。TSの原因が「若葉の科学的好奇心」によるものなので、タケルは完全に巻き込まれる形でTSをしてしまいます。しかしこの二人の場合、おそらくTSがきっかけにならなければ「微妙な心の揺れ動き」をお互いが自覚することは無かったはず。
終盤で「なぜ」タケルは若葉と「キスしてしまったこと」にこだわるのか、「なぜ」若葉は「もう一度キスしたい」と思うのか。まだ1作目なので、二人共「なぜ」のトンネルの先にあるものは見えておらず、目の前の出来事について考えることで精一杯。

このTS事件(事故?)は「若葉の科学的好奇心」から始まったものでありながら、タケルが女体化してしまうことは若葉にとって予想外でした。だからこそ、これから「研究」をして原因究明をする必要があります。
若葉はグミの力で意識してTS出来ますが、タケルは思わぬタイミングでTSしてしまう可能性がある。それをどうやって防ぐのか。
「性欲」とは違う「研究のための性処理」が絡んでくるこのシリーズ、両者のバランスはどうやって変化していくのか。
タケルにとってこの状況は「若葉のせいで」という受け身でありつつ、「ある日、目が覚めたらTSしていた」という作品とは違って「若葉に協力さえすればもとに戻る可能性が高い(研究結果を形にできるのは若葉だけ)」というもの。これらの要素も、これからの二人にとっての大きな鍵になりそうです。

その2 ・段階を経ていくんだよね

今作は全34Pあるのですが、起きた出来事は

  • 若葉の男体化
  • タケルの女体化
  • 若葉が勃起、その後手コキ
  • タケルの子宮がキュン
  • 射精しながらキス

というもの。TSの事実を除けば、行為としては「女体化したタケルが男体化した若葉を手コキし、キスをする」だけなのです。
タケルは女体化するものの、身体を触られたり「女性としての気持ちよさ」を味わうところまではいかないのです。しかし「だけなのです」とは言いながら、この二人の場合は「特に何もないところから」のスタート。
普通の友達である二人だからこそ、手コキとキスをすることがいかに特別なことか。自分たちの気持ちを自覚していない二人だからこそ、「実は好きだった。SEXしたい」にならない。
34Pだからこそ、その日のうちに終わる。だからこそ、終わった後に考えたりモジモジしたりする。

27P以降はエピローグとも言える「下校のシーン」になるのですが、ここでの会話やモノローグがとっても良いんです。タケルと若葉の考えていることが全く違うのはもちろん「特別な関係になりすぎないが、確実にこの日の昼までとは違う感情をお互いが抱きかけている」という絶妙なバランス。

TSがあったといっても、それがきっかけでアクセルを踏んで関係が進むわけではない。初々しい二人だから、歩みは遅い。でも確実に、段階を経て進んではいる。
2作目以降も相変わらずゆっくり進む二人の関係ですが、二人の気持ちや悩みを丁寧に処理していく様子が私にはとても魅力的に映りました。
だからこそ私にとって若葉とタケルは「見守りたいカップル」になっていき「女x女」「男x男」のパートもすんなり受け入れられるのだなと感じました。


最後に

「ページ数が多く、日常パートもエロパートも丁寧に描ける」のが同人誌の良さなら、同時に「進みをあえて遅くし、丁寧に積み重ねる」ことが出来るのもまた同人誌の良さなんですね。
TSというのは何も「同性の友達」だけが相手のジャンルではない、むしろ「異性の友人」が相手になることで更に可能性が広がるジャンルなんだなと初めて気づく事ができました。

果たして2作目、3作目はどんな展開が待っているのか。どんな組み合わせの二人が見られるのか。とても楽しみなシリーズに出会えて、私はとてもワクワクしています。